Selenium / セレニウム
転移する感情
一年前に心臓移植手術を受けた亮二は、ここ最近、実際には面識の無い女性が、自分に"隼斗"と違う名前で語りかけてくる夢を見ていた。それが生前のドナーの記憶だと思った亮二は医者に話すが、信じてもらえない。そんなある日、公園で夢に出てきた女性と道で偶然すれ違う。思わず女性の跡をつけていく亮二だったが…。
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2019/11/17 撮影1日目
2019/11/23 撮影2目目
2019/12/01 撮影3日目
2019/12/14 撮影4日目
2020/05/23 予告 公開
2020/05/24 本編 公開
2020/06/15 メイキング動画 公開
2019撮影、公開2020年。以下文言、田阪監督よりコメント。
●発想のキッカケ
元々臓器などの移植手術により、ドナーの記憶や趣向がレシピエント(移植者)に移る、という現象に興味がありました。
まだ科学的には解明されていないにも関わらず、実際にそういう体験をした方が何人もいらっしゃったり、また映画や小説、アニメ等のフィクションでも題材にされる事が多く、【記憶転移】物として一種の定番ジャンルになっていると思います。
自身もこのテーマで何か作品が作れないかなと思い、先ずは2015年にヒューマンドラマ寄りの作品を書いて、実際に一部撮影もしたのですが、撮影途中でトラブルが多発し中止に…。
数年後に、アクションや巻き込まれ型サスペンススリラーテイストの脚本を書いたのですが、自主映画だと到底実現が難しいような話になってしまい(苦笑)、仕切り直してアクション要素を省いて、サイコスリラーっぽい雰囲気を意識して書いたのが本作になります。なので念願のテーマがやっと実現できた訳です。
■キャストについて
今回は本当に素晴らしいキャストに恵まれたと思います。
主役の新倉亮平を演じてくれたのは、相田純耶さんです。相田さんは以前から不思議箱屋の竹中透監督作の現場でお会いしていて、いつか自分の作品にも出て頂きたいなと思っていたので、今回主人公の新倉亮二役に声を掛けました。
以前から今春に就職する予定だったらしく、今回の映画が最後の出演作になると話してくれました。それを言われて、こちらも俄然気合いが入りましたね(笑)。
相田さんは身長も高くて、声も通るのでとても画になる方です。複雑な役柄なので、最初は少し役を掴むのに苦労されている印象もありましたが、撮影を進めていく内にグングン良くなっていったと思います。中盤の、弘平と真紀と対峙するシーンで、抑制された雰囲気から一転して感情を爆発させる演技は、特に素晴らしかったです。
藤堂真紀役と乾弘平役には、アクターズスタジオ北海スターゲート校さんから東杏璃さんと門真昇治さんに出演して頂きました。
お二人も竹中組で面識があり、僕の作品でも出演を熱望しました。
東さんは、普段はニコニコしていて穏やかな印象の方ですが、シリアスなシーンになるとキリっと切り替わるので、さすが女優さんだなあと関心してしまいました。
あるシーンで、一回撮影した彼女が台詞を言うシーンを、もう一度アップで撮らせてほしいとお願いした事がありました。
なので、そのアップの部分だけその現場ではなく、街の隅の方で急遽撮り直しました。多分その時東さんと門真さんも何でわざわざここを撮り直すんだろう?と疑問に思われたと思うんですが(苦笑)、その時の彼女の表情は、それぐらいこの作品内で重要なものだったんです。東さんは見事にその表情を見せてくれました。
門真さんは、これまた竹中組にも沢山出演されていますが、割りと明るめのキャラクターが多い印象でしたので、もう少し大人でダークな芝居されている所も見てみたいな~と、半ばミーハー心でこの役をお願いしました。
あるシーンの台詞で、その台詞の言い方が僕のイメージと違う演技をされた事があったんです。
読み合わせの時も、ちょっとニュアンスが違うかなとやり直してもらったりしたんですが、本番の撮影で、結局その演技に戻っていたんです。でも編集をしてみると、彼のその台詞の言い方がすごく良かったんですね。
正直僕がイメージしていた芝居よりずっと良かった。この時に「ああ、これが映画作りの醍醐味なんだなあ」というのを感じましたね。監督や脚本家のイメージをただそのまま具現化するのではなく、役者に解釈を委ねる事で、より良いものにしてもらえる。バンドでいうジャムセッション的な。そういう事を実感しました。
医者役は、このお話の導入部分を観客に説明させるだけの役で、メインの話には関わらない為、当初は僕が自分でやる事も考えていた役でしたが、高橋信也氏にお願いした所、快く引き受けてくれました。
彼は今までも僕の作品に出演してくれ、現場でも明るいキャラで盛り上げてくれるので、いつも本当に助けられています。
今回は短いシーンですが、医療用語の連発に結構苦戦してましたね(笑)。ちなみに、この台詞の一部は某映画の台詞のまるパクりだったりします…。
キーパーソン役には、長年の友人である竹中透氏に出演してもらいました。彼もいつも僕の監督作に出演してサポートしてくれる一人です。
と言いつつ僕はその倍以上、彼の監督作に出演していますが…(笑)。こうやって困った時はお互いに助け合ってます、ハイ。
今回お願いしたのは、まあハッキリ言って酷い奴の役ですので、アクターズの方には頼めないよなあ…と思った事も理由の一つですが(笑)、一番の理由はかつて専門学校時代に作った僕の処女作『the Another Side』という作品で、顔が見えず一言も発しない男という役をやってもらった事がありまして、今回の役にも同じようなイメージがあったので、また彼にあの時のイメージでやってもらおうと思ったからです。短い出番ですが、インパクトはなかなか強烈だったのではないでしょうか。
僕の拙い演出でしたが、皆さん自分なりにキャラクターを考えてきてくれていまして、現場で僕が改めて細かく説明する必要はありませんでした。陰惨な内容の映画ですが、現場が陰惨になるような事は一切なく(笑)、終始穏やかに進行出来ました。
寧ろ監督の僕が一番皆さんにご迷惑を掛けてしまったかも(苦笑)。そう思わせる程に出演者の皆さんに助けられた撮影だったと思います
■ロケ地について
今回は先ずクライマックスのロケ地から考えました。回想シーンやクライマックスのシーンの舞台になっているのは、豊平川沿いの河川敷です。この場所は僕の職場への通勤ルートの途中にあるのですが、昔『西部警察』のロケで使われていた場所なんです。
なのでいつか自分の作品でも使いたいな~とずっと夢見ていたんです。もちろん、あんなド派手なカーチェイスや爆破は出来ませんが(笑)。今回はひとけは無いけども、開放的で雰囲気のある場所として、とても良いロケーションだったと思っています。
■作品を創り終わってみて…。
短い撮影期間でしたが、念願のテーマで作品が作れて満足した部分がある一方、作り込みきれずに悔やまれる部分も沢山ありました。
特に病院関係のシーンでは、ロケ地や小道具など既に何人かの方に指摘され、短いシーンでもディティールは疎かにしてはいけないのだなと思いました。
また一部のシーンは、本来ですと雪が降っていないシーンの筈だったのですが、撮影時に降ってしまい「もう時期的にも積もってしまうので、来年の雪解け時期に撮り直そう」と思っていた所、年が明け、まさか世間がこんな事態になるとは思わず、やむ無く再撮を諦め、シーン自体の解釈を変えた部分も出てきてしまいました。
ですが、こういったトラブルは映画作りには、大なり小なり付き物なんです。毎回100%満足出来るなんて事はあり得ません。
常に多くの失敗と反省があり、それを糧に次の作品へ…。その繰り返しです。
今は創作活動が(それ以前に生活やメンタルが)大変な時期ではございますが、この事態が終息したら、また何か新しい事が動き出せるように、僕も日々色々と考えています。
皆さんも前向きに、何か目標を作って、お互いこの時期を乗り込えましょう。今回はご鑑賞ありがとうございました。
【本編配信停止中】「セレニウム」本編ですが、現在PFF(ぴあフィルムフェスティバル)出品中の為、配信一時停止中です。
※2021年内に配信復活予定です。
田阪祐樹
脚本・撮影・編集・音声・整音・効果音・色調調整・小道具
ロケーション・予告。タイトル
田阪祐樹
撮影・スチール・メイキングカメラ・WEBサイト・ポスターデザイン
竹中透
音楽
尹徳史
ロケ
豊平川沿いの河川敷
アクターズスタジオ 役者スケジュール連携
高橋一成 西村京子